2016年9月下旬にキーボードを、10年間使っていたMajestouch Linear FKB108ML/NB からREALFORCE91UBK-Sに買い替えましたという話です。
キーボード買い替えの決意
メーカー製PCを買っていたころは、付属のキーボードを使っていました。
とくに不満もなくふつうに使用できていました。
が、どれも1年ちょっとで壊れるんです。
壊れては店頭に行って、3000円以下のキーボードをあれこれ試して買って、
また壊れては……の繰り返しに少々げんなりしていました。
キーボードが変わることによる環境の変化は、修羅場中にくらった職場での部署異動にも匹敵します。
そんな困った環境変化なんて極力回数減らしたい、
もっというならひとつのものを長く使いたい……!
というわけで、わたしがメカニカルキーボードというものに手を出したのが10年近く前のことでした。
メカニカルキーボード
打ち心地と耐久性に定評があるのが、メカニカルキーボードの特長です。
キートップの下にある軸(キースイッチ)によって打ち心地がそれぞれ違います。
キースイッチの種類についてはこちら。
- 軽やかな打鍵感とクリック感がやみつきになる人も多い青軸
- 各軸の平均値のような使い心地でメカニカル初心者向きな茶軸
- 茶軸とほぼ同等の押上圧でありながらクリック感をひかえめにした赤軸
- 赤軸の静音性をさらに高めた新発売のピンク軸
- 重い反発としっかりとした打鍵感がハードパンチャーに人気の黒軸
主だった軸だけを抜粋してもかなりの個性の違いがあります。
当時のわたしが選んだのは黒軸。
打鍵感が重いと言われがちな黒軸ですが、なにせふつうなら2年程度持つと言われるキーボードを1年強でぶち壊すほどキーを強く叩きこむくせのあったわたしの指にはむしろちょうどよかったようで、この10年まったく不満はなく、不具合も故障もキートップの印字消滅とも無縁のまま、日々の酷使に耐えて活躍してくれていました。
ただ、
- 最近10代の頃とは比較にならんくらい指のちからが弱くなってきた
- キーを押しこみきれずに打ち損じる頻度が増えてきた
- それを避けるため意識して強く打つ必要が出てきて手首の疲労がたまりやすくなってきた
- 作業机を変えたことで横からにゅっと出るタイプのマウス台がなくなり、おのずとキーボード横にマウスを置かざるをえなくなったことで右側の肩こりがひどくなりはじめ、さすがにテンキーレスのキーボードに変えてマウスを手元に寄せる必要が出てきた
というさまざまな事情もあって、
2016年9月某日、じつに10年ぶりにキーボードの買い替えを検討したわけでした。
キーボードを選ぶ
今回買い換えるにあたり、絶対条件は以下。
- 日本語キーボード
- テンキーレス
- 黒軸の押下圧(65g)より軽いもの
- とにかく丈夫でメンテナンスも簡単
- キートップの印字が消えにくい
3つ目に関しては、むしろ黒軸自体が全キーボード中でもトップを争う重さなので問題なし。
4~5つ目をクリアするとなると、またしても同価格帯かそれ以上のキーボードじゃないと厳しくなります。
というわけで今回もメカニカルから決めようかなと家電店に行き、FILCOのMajestouchシリーズ各種の打ち込みをしてみました。
ですが、
おかしい。
どれも重い。
まさかの事態です。
黒がダメなら赤か茶軸にすればいいかなと甘く考えていたのに、そのどちらもが今のわたしの指ではつっかえてしまってまともに打てなかったんです。
かろうじて青軸はそれなりだったのですが、こちらはこちらで打鍵音が気になりすぎて個人的には厳しい。
さらに気になったのが、
なんか……キーが指の下でカクッてなる……?
おそらくなのですが重い軸に慣れきったせいか、黒軸以外だとキートップが指のちからに負けてぶれてしまい、その結果わずかにカコカコ揺れながらキーを押しこむような感覚になっていたのではないかと。
けれど、黒軸はやっぱり重い。
とくに店頭見本は比較的新品なのでキーもまだ小慣れてなくてすごく重たい。
完全に予想外でした。
いきなり、メカニカルキーボード全軸が候補からはずれてしまいました。
メカニカル以外で上記条件を満たすキーボードは、もはやひとつだけ。
こうしてわたしは真顔で白目を剥きつつも、
キーボード界の王様(と勝手に思っている)、
東プレのRealforceに行きついてしまったわけです。
じつのところRealforceは10年前にも一度は検討し、値段を見てサクッとあきらめたキーボードでした。
- 最高峰の打ち心地と名高いハイエンドキーボード
- 静電容量無接点方式のため、チャタリング*1が構造上起きない
- キーによって重さの異なる「変荷重」を採用しているモデルが主流のため指が疲れにくい
- メンテナンス簡単で耐久性も非常に高い
- 信頼と安心のMade in Japan
- 高い
- 高い
- 高い
一日中キーボードを使うような職業の方、とくに非常にタイピングの早い人に好まれる傾向があります。
文章を考えた次の瞬間にはパッと画面に表示させられるような言葉の魔術師向きです。
妄想の泉をコポコポ湧かせながらちまちまのろのろ文章を打ち、しかも左手で資料見たりマグカップ持ったりする癖があるせいで両手で打ってる時間より確実に片手で打ってる時間のほうが長いようなわたしにとっては言うまでもなく完全にオーバースペックのシロモノです。
けど、前のMajestouch黒軸は10年持ちました。むしろまだ使えます。
Realforceは同程度もしくはそれ以上の耐久性であることを考えると、もしかすると真剣に検討して買うキーボードとしてはこれが生涯最後の台になるかもしれない。
そんな気持ちが胸をかすめたが最後、数日にわたりあちこちの店頭で試し打ちを続け、やっとのことで決めた一台がこちら。
東プレ キーボード REALFORCE91UBK-S 静音モデル
……カッコつけたこと言いましたが、悩んでる間にも右の肩こりは限界に近づいてきてるし、Realforceは生産不定期なので一度品切れになると数ヶ月先まで入荷がないなんてこともザラだしで、さっさと決め手が欲しかっただけなのでした。
わたしの一台、こうやって絞りこみました
今回の候補にあがっていたのは以下の3つ。
- REALFORCE91UBK-S(黒・静音モデル)これに決めた!
いずれもテンキーレスの日本語キーボード。
違いはキーの色と刻印、静音か否かのみです。
結論として静音モデルであるREALFORCE91UBK-Sを選んだわけですが、その理由を述べてみます。
思ったよりよさそうだった変荷重
まず、上記3つはどれも、キーによって重さが違う変荷重のモデルです。
メインのキーは45g、小指で打つキーは35g、あまり使われないキーは誤打を防ぐために55gに設定されています。
キーごとに打ち心地違うのって不安定にならないかな?
と思ったんですがこれがとんだ間違い。
キーごとに対応する指のちからに合わせてキーが沈みこむよう設計されているので、驚くほどなめらかな使い心地。
なかでもエンターキーを打つ小指の負担は段違い。
大げさかもしれませんが、まるで楽器のようなキーボードです。
とくに静音モデルにいたってはエレクトーンのようななめらかさでスイスイ打てました。
あと、作りがすごくしっかりしています。
キーがぶれることなくまっすぐに下りるので、ふつうに打つぶんにはカコカコしません。
赤・ピンク・茶と同じ45gだったのにふつうに扱えたのはこの点が大きかったと思います。
日本語テンキーレスモデルには変荷重タイプよりもさらに軽いALL30gという型もあり、最悪こちらにしないとダメかと思ってましたが、むしろ変荷重でも充分に軽い打ち心地なので早まらなくてよかったです。
白と黒とではまったく別物
これ、単に成型色が違うだけじゃないんです。
白は表面サラサラで指がするする流れる感じ、
黒は表面に薄いゴムのような滑り止め加工がされていて指をずらす際にわずかに抵抗がある感じ。
高速タイピングできる方は白のほうがスイスイ打てると思うのですが、わたしの場合、白はすべりすぎてしまってミスタイプ連発でした。
黒だとほどよく指が止まるので、確実性は高かったです。
キートップ印字にも違いがあります。
白は昇華印刷、
黒はレーザーマーキング。
昇華印刷は非常に耐久性の高い印字方法で、ふつうに使うぶんにはまず消えることはありません。
一方のレーザーマーキングは耐久性こそ低くはないものの、昇華とくらべると消えやすいです。
なお、印字自体も
白→かなあり
黒→かななし
と、それぞれ違います。
そのため、かな入力派の方は白一択かも。
上記要素を考慮した結果、キートップの触り心地なら断然黒だけど印字耐久性を考えると白……で迷いつつ、
最終的にはテンキーレスの静音モデルが存在する黒にしました。
静音モデルにした理由
UBKは通常モデル、UBK-Sは静音モデルです。
どちらも同じ黒モデルですが、音だけでなく打ち心地も明確に違います。
UBKがスコスコサクサクなら、UBK-Sはスッ&モチッといった感じ。
静音モデルというだけあり底打ちしたときの感触が非常におだやかで、指に響きません。
その独特の打ち心地のせいか、 UBK-Sは UBKと比較して少々重く感じます。
(同じ系統の軸なのに静音になるだけで少し重く感じるといった点は、メカニカル赤軸とピンク軸の違いによく似ています)
わたしの場合今まで使っていたのが黒軸だったので、
軽すぎるよりは少し重いほうがいいかもしれないと思い、こちらにしました。
ちなみに音はそうとう静かです。
Realforce自体メカニカルと比較するとかなり静かではあるのですが、
静音モデルはドア1枚へだてた向こうで使われていても気にならないくらい。
実際に使ってみて
というわけで購入したのが2016年9月下旬。
きょうまで4ヶ月ほど使ってみての感想です。
タイピングがものすごく軽い
軽いちからでサクサク入力できるので、スピードアップはもちろんのこと打ち漏らしによるミスタイプ率も激減しました。
かといって軽すぎるということもなく絶妙なバランスです。
本体に少し高さがあるので、気になる人はパームレストなどを併用したほうがいいかも。
わたしは前のキーボードのときから使っているFILCOのウッドパームレストを引き続き使用。
ですがRealforceに合わせるには若干高いため、裏側のすべり止めゴムは剥がしました。
代わりにつけている滑り止めについては以下の記事に。
低反発&蒸れる素材のパームレストが苦手なため、当時はそれ以外で探したらこれしかなかった……のですが、
最近ではこんなのとか (これのマウス用ver.を使っていますが気持ちいいです)
こんなのも出ているようなので(かなり薄めなので人を選ぶかも)、
どうしても厳しくなったらこのどちらかから検討してみようと思っています。
打ち心地が気持ちいい
さすが静音モデル。打鍵音が小さいというだけでこんなにも耳と手にやさしい。
キーの指へのフィット感が尋常ではなく、打つということを意識しなくても思いえがいた文章をそのまますなおに入力できるというのが大げさではなく異次元の感覚です。
なによりいつもなら新しいキーボードに慣れるまで一週間くらいかかるのに、今回は使いはじめてすぐに指になじんだのが驚愕でした。
スペースキーがMajestouchにくらべてかなり短いのですが意外と問題なし。
キーごとの間隔がしっかりあいているので、右手小指がinsertなどのキーに誤爆することもありません。
ただし指の脂は目立つ
カラーがマットな黒なので、ホコリはもちろんのこと指の脂も目立ちます。
酷使していくとキー刻印も消えてしまう可能性があるそうですが、これはもう少し使い続けないとわからないです。少なくとも現段階では無事です。
幸いメンテナンスは容易なので、指の脂や本体のホコリに関しては月1くらいでお掃除してあげれば大丈夫そうです。
Realforceはカバーが簡単にはずせるので、キートップをはずさずとも内側のお掃除が一気にできます。
もちろんキートップをひとつひとつはずして徹底的にお掃除することも可能です。
総括
非常にいいキーボードです。
打てば打つほど感嘆が漏れる、使えば使うほどだいじにしたくなる一台。
わたしにとっては生涯最後の一台がこれでも悔いはないというくらいの嬉しい出会いになりました。
店頭で試すときは、なるべく自宅の環境と近い状態で試せる店舗だとベスト。
近くの机を借りて実際に座って触れるような店舗だといちばんです。
個人的にですが、TSUKUMOはどの店舗もハイエンドキーボードの種類が豊富で店員さんのアドバイスもていねいなのでおすすめです。
都内なら断然秋葉原のTSUKUMO ex.を推奨。
もうひとつTSUKUMOさんをおすすめする理由として、交換保証というサービス(購入時に加入。有料)があります。
これを使うとRealforce91Uを買ったあと、やっぱり静音モデルがいいなと思ったら差額を支払って上位モデルであるUBK-Sと交換してもらうなんてことも可能なので、どうしても決められなかったら店員さんとよくよく相談した上でそういったサービスを利用してみてもいいかも。
(ただし上位→下位モデルの交換は不可なので注意。詳しくは店員さんに!)
おしまい
長くなりましたが、以上です。
わたしもRealforce購入前にいろいろな方のブログ記事を読んで参考にさせていただきました。
この記事も、どこかの誰かの参考になることを願っています。
今のキーボード周りの環境。
手前にあるのがFILCOのウッドパームレスト(M)、マウスの下にあるのが サンワサプライのマウス用リストレスト。
ちなみにこの4ヶ月で肩こりと手首の疲労感は激減しました。
追記(2018年某日)
REALFORCE91UBK-Sが2018年6月に生産終了になりました。
製品 - Home & Office | REALFORCE | 日本製プレミアムキーボードの最高峰
順次、新型に切り替わっていくようです。
新型は全体的にフォルムがシャープになり、旧型よりスペースキーが長くなります。
残念ながらこの記事内で紹介したREALFORCE91UBK-Sの後継になりそうな機種はありません。
かろうじて近いものを探すと、
- 変荷重
- 日本語キーボード
- テンキーレス
- 静音
- かな無し
- 本体色が黒
このあたりの条件が一致しているREALFORCE TKL S / R2TLS-JPV-IVになりそうです。
製品 : REALFORCE TKL S / R2TLS-JPV-IV | REALFORCE | 日本製プレミアムキーボードの最高峰
新型・旧型についてはこちらの比較記事が非常に参考になります。
どちらを買おうか、どれにしようか迷っている方はぜひ。
pasokatu.com
番外編:Majestouch Linear FKB108ML/NB
せっかくなので10年近く使ったFILCOの黒軸キーボードについても。
Majestouch Linear FKB108ML/NB(生産終了)
現行モデルはこちら。
FILCO Majestouch2 108フルキー黒軸日本語配列 USB&PS2両対応 Nキーロールオーバー対応 独Cherry黒軸採用メカニカルキーボード ブラック FKBN108ML/JB2
基板がリニューアルされて、耐久性、信頼性、打鍵感の向上を実現しているとのことです。
ここがすごい
10年使ってきましたが故障回数ゼロ。
(ほんの数週間前にWキーが反応しなくなる不具合が起きましたが、キートップをはずして嵌めなおしたらすぐに直りました。これがこの10年で唯一の不具合でした)
かなり酷使したのですがキートップの印字も一切剥がれていません。
10年使った現物写真。酷使したEnterもBackSpaceも刻印剥がれ一切なし。
使い心地
押下圧65gとかなり重たいため、しっかりと打てている実感の得られるキーボードです。
指のちからが強めで、タイピングがゆっくりめの方だとちょうどよく使えるんじゃないかなと。
打鍵音は、底打ち(キーを基板に当たるほど強く押しこむこと)させて使うと茶軸と同等程度には響きます。
青軸のようにカチャカチャッと軽い感じではなく、コンコンッと少々重い音。
わたしはどんなキーボードであろうと底打ちする癖があるのでこんな感じですが、底打ちせずに指をすべらせながら打鍵できる人なら、メカニカルのなかでも静かに使える部類に入る軸だと思います。
ちなみにFILCOメカニカルキーボード全般に言えることですが、
本体がかなり重たいおかげで、勢いよく打ち込んでもビクともしません。
ずっと使ってきて
とにかく不満らしい不満がまったくないキーボードでした。
今回の買い替えもわたしの指のちからの低下と肩こりの悪化が原因だったので、それがなかったら壊れるまでずっと使い続けていたと思います。
わたしにメカニカルキーボードのおもしろさを教えてくれて、キーボードで文字を打つことの楽しさを存分に味わわせてくれた一台。
最初の一台に選んで悔いなしでした。
メカニカルキーボードは非常に丈夫な上に動作の安定性も高いので、壊れたから買い替えというケースはあまり起こらないようです(初期不良の話はときどき聞きますが、もし当たってしまった場合はもちろん交換可能)。
もしこれからメカニカルで一台選ぼうかなと考えている方は、ぜひ店頭でじっくり試して、可能であれば日を変えて幾度か触ってみて、その上で自分に合った一台を選ぶことを強く強く推奨します。