文字だらけの薄い本作るよ。

小説同人誌を作る上での試行錯誤を記録したもの。

刀剣乱舞本『hope』の表紙依頼をした話

2015年6月28日発行の刀剣乱舞本『hope』(蛍丸×山姥切国広)の表紙のイラストおよびデザインを、友人のデザイナーにお願いしたという話です。

 

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rokuhare.hateblo.jp

の記事のうち、表紙依頼をした際のやりとりなどをまとめました。

 

刀剣乱舞本は友人のぶんちき(kwkm)氏に表紙イラストをお願いしています。
1冊目『恋に似ている』ではイラストのみの依頼でしたが今回はデザインも含めてお願いしました。

 

 

仮依頼をする / 4月中旬

1冊目の入稿後、脱稿連絡も兼ねてぶんちき氏には

  • 都合が合えば次もお願いしたい
  • 6月28日のイベント合わせである
  • 原稿〆切日の予定
  • 表紙の仕様(当初は黄×黒の2色刷予定だった)

を伝えていました。


当時のメールにはほかにも、

イメージとしてはL○ftっぽいカラーリングとカジュアルさ、
広範囲の黄色ベタがガッと目に入ってくるちょっとしたインパク

とあったので、黄色い表紙にしたいという点はこのころから決まっていたようです。

 

 

本依頼メールを送る / 5月の大型連休明け

幸いにも6月のイベント合わせで問題ないとの返答をもらえたため、後日あらためて都合を確認したのち本依頼メールを送りました。

以下、当時出したメールから一部抜粋。

 

本のタイトル: 『hope』(仮) 蛍丸×山姥切国広 全年齢本

原稿サイズ: A5表紙(表1-4) / 背表紙2mm前後予定、塗り足しは天地左右5mmずつ

データ形式: PSD

解像度: 350dpi

カラーモード: CMYK

原稿〆切: 2015年○月△日
※今回は納期約1ヶ月、印刷所の〆切10日前あたりを目安とした期日でお願いしました

 

■お願いしたいこと
表紙イラスト、および表紙デザイン(文字入れ含む)

 

■表紙の要素について
前回描いてもらった本とは別設定の話につき、表紙のテイスト自体を区別したい。
色のイメージはL○ft。

 

■絵にお願いしたい要素

▼表1
・「鍛錬所で、打ちあがったばかりの蛍丸を見る、同じく鍛刀された直後の山姥切国広(2口目)」というイメージ

くわしくは下記のあらすじ参照
鍛刀直後ということで、服装はふたりともデフォルト希望


・背景は鍛錬所っぽい感じ。なんとなく伝わればOK


左側:山姥切国広(2口目)。椅子代わりの石(鍛冶場にありそうなゴツゴツした石)に座ってる。

右側:蛍丸。鍛刀されてすっくと立ちあがったところ。デフォルトのポーズっぽい立ち方。互いに向かい合ってる


キャラ等身や外見年齢などは、前回の表紙と同様に。

 

▼表4
・背景は表1と流れや雰囲気が近い感じ
・画面右側に山姥切国広(近侍)。右向き

近侍山姥切国広は、二口目より若干自分に自信を持てているような雰囲気だとベストです。
審神者との信頼関係が比較的うまくいっている近侍山姥切国広、という設定上)
強気とか笑顔という感じじゃなく、全体的に雰囲気の翳りが少しやわらいでる感じ。

と言いつつも表4に関しては、場合によっては人物絵なくても大丈夫です。

■塗りとか質感とか

人物:アニメ塗りに近いパッキリした感じがいいか、ちょっとポップな感じのどちらかでお願いします。

ベタ面積多い背景だとアニメ塗りっぽいほうが映える……?

背景:鍛錬所(っぽい雰囲気)

黄色ベタ(Y100+M10~15くらいの)に白抜き線などで表現してもらえたら。
あまり背景が主張する感じじゃなく、キャラ絵だけカラーで他はデザイン的なオブジェクトくらいでもいいかも

■デザイン
タイトル文字を太ゴシックにしてそれこそL○ftな感じにするか、太明朝系なフォントでおしゃれ優雅っぽい感じに。
できればタイトル色は黒で。

■本のあらすじ
すでに自分と同じ刀が近侍として存在している本丸に鍛刀されてしまった山姥切国広と、 鍛錬所で同時刻に打たれた蛍丸のお話。

ようするにデイリー任務で2つ同時に鍛刀開始したら
先に鍛刀時間1時間30分の山姥切国広さんができちゃったわけだけど、
すでにこの本丸には初期刀にして近侍の山姥切国広がいるので、
おそらく倉庫送りか刀解になるだろう、おまえ最期にしておきたいことあるか?となって、
「隣で打たれてる刀ができるまでここにいさせてくれ」と近侍山姥切国広に頼む二口目山姥切国広。
(この次点では隣で打たれてる刀が太刀か大太刀かすらわかってない。3時間組なだけに)

その後目の前で生まれたこの本丸最初の大太刀が、これから消える運命にある二口目山姥切国広には最初で最後の希望みたいに見えたよ、
……というようなお話です。

というわけで、二口目山姥切国広と鍛刀直後の蛍丸の邂逅、みたいな表紙でお願いします。
シリアスだけど重い話じゃないので、明るめにいきたいです!


■その他
当日ポスター、お品書き、値札POP、書店等の販促用途で表紙絵を使わせていただくことがあります。
以上についてご了承いただけましたら幸いです。


これでもかと言うほどリクエストガッチガチです。

今回はあらすじなどの情報から「こういう感じかな?」とイメージを起こしてもらうというよりは「この構図を絵やデザインに起こしてください!」なオーダーだったので、上記のとおりかなり詳細に要望を出しています。

その他、色合いについてなどの参考画像をいくつか添付しました。

 

 

打ち合わせ

会う機会があったので雑談がてら軽く打ち合わせ。

彼女がノートに描いてきてくれた構図ラフがイメージそのままだったので「これでお願いします」と伝えました。
本になったあと値札や帯などを貼ることも考えて、表1-4ともに下側に余白を作ってもらっています。

以降のやりとりはツイッターのDMに移行。
画像添付が容易なのと、即座に確認、応対できるので便利です。
なおファイルのやりとりはオンラインストレージでおこなっています。

 

 

できあがっていく表紙

打ち合わせ後に、文字配置についての希望を画像で送りました。

 

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以上で当方からの要望出しは終わり。

ここからは絵師さん兼デザイナーさんであるぶんちき氏のお仕事です。

原稿中に進捗状況の報告を兼ねた作業中画像をいくつか送ってもらえた&掲載許可が出たので、以下に載せていきます。

 

 

下書き

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ほたちゃんかわいい(小並感)

余談ですが1冊目の依頼時に

「山姥切国広さんは高校生に見える大学生のイメージで」
「ほたちゃんのふとももおいしそうに描いて」

という希望を出し、今回も基本は同様にしてもらっています。

 

 

ペン入れ

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蛍丸帽子に注目。

「このほうがいいと思って」(ぶんちき氏)

……やられました。
そりゃそうだ、蛍丸ならふわっとぴょこっと降り立つよなと。
あまりの衝撃の結果、本文の蛍丸顕現シーンも表紙に合わせて書きなおしました。

 

 

表紙と裏表紙

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指定では右向き希望でしたが、たしか「横顔以外もあったほうがいい」という彼女の提案でこの構図になったような……?(うろ覚え)
まさかのアップで大歓喜

 

 

タイトルデザイン案

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3案も作ってくれたのですがA案(上)見た瞬間にこれに決定。
彼女もA案イチオシだったようでした。

 

 

完成

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お願いしていた期日の前に表紙データが納品されました。

最初の納品直後「色をなおしたい」と彼女からセルフリテイク希望があったのでおまかせしました(上記画像)。
前回データ(タイトルロゴ案時)から全体的な色味が変わっています。

背景色はY100であがってきました。
彼女は「そっちでデータいじっていいよー」といつも言ってくれるので(そのためのレイヤー分けもしてくれる)、当初の予定どおりMを10%ほど混ぜるか否か迷ったあげくY100のままで入稿。
印刷してみたらクリアなY(イエロー)が白地によく映えていました。

そして注目してほしいのが背景
鍛錬所を思わせるオブジェクトですが、これがそのまま本文のメタファーとなっていたという嬉しいサプライズが仕込まれていました。
(とくに山姥切国広・蛍丸両氏の周囲にあるオブジェクトに大注目)
気づいた瞬間は「やられた……」(2回目)と頭を打ちつけました。

思いもよらない角度から的確なアイデアを出してもらえたことがこの本を作っていちばん幸せだったことと言っても過言ではありません。
静と動の対比となっているイラストと内容に沿ったデザイン。
本文を物語ってくれる表紙になってくれて最高に幸せでした……!

 

 

 

総括

完成した表紙がすばらしかったのはもちろんのこと、途中経過を見せてもらえたことでなんども驚きを味わわせてもらえたのがものすごく楽しくて、あれから数年経過する今でもできあがった本を見るたび当時の高揚を思い出します。

自分にない発想を「こういうものもあるよ」と見せてもらえる経験は、自分以外の誰かと作れたからこそのものでした。

ジャンルをよく知っている人だったので依頼時に指定しなかった部分の判断を安心して相手にまかせられるというのも大きかったです。


先述のとおり刀剣での1冊目の表紙イラストも彼女にお願いしたものですが、当時は納期があまりなかったのでイラストのみ納品してもらい、こちらで配置及び文字入れをしました。

……が、デザインを本職としている方の絵を素人がデザインするという経験はとんでもなく心臓に悪かったので「次があるとしたら絶対デザインも含めてお願いしよう……」とかたく心に決めたのでした。

 

 

 

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以上です。
わたしのガチガチオーダーの隙を突いて変幻自在にイラストとデザインを組みあげていったぶんちき氏の魔術師ぶりをこの記事を読んでくださった方々に少しでもおすそわけできたなら満足です。悔いはありません。

 

ここまで読んでくださった方、そして今回この記事を書くことを快諾してくれたぶんちき氏、ありがとうございました!